山田うん
音楽とは、風の形をしたもう一つの人間の姿。
山田うん 振付家・ダンサー
器械体操、バレエ、舞踏を基盤に、ジャンルを横断する独自の身体言語を築き、1996年より振付家・ダンサーとして国際的に活動。2000年、横浜ダンスコレクションにて在日フランス大使館賞を受賞し渡仏。2002年に自身のダンスカンパニー「Co.山田うん」を設立し、国内外で高い評価を得ている。
音楽、美術、文学、伝統芸能、レストラン、AIなど、異分野との交差を通じて作品を創作。オペラや演劇、東京2020オリンピック閉会式などでも振付を担当するほか、ヒグチユウコ原作の絵本『せかいいちのねこ』の舞台化では、演出・振付に加え、脚本・作詞も手がけた。ファッションショーでは、ランウェイを歩くモデルの「佇まい」に身体性を見出す演出を行う。
ダイナミックな群舞から、日常のささやかな仕草に至るまで、一貫して日常に潜む違和感や死生観と向き合い、「ちがい」や「矛盾」にこそ表現の本質が宿ると捉える。人や文化の境界を越え、身体を通じたノンバーバルな対話の可能性を探り続けている。
主な受賞歴に、第65回芸術選奨文部科学大臣新人賞、第37回江口隆哉賞、第77回文化庁芸術祭舞踊関東の部優秀賞など。2017年には文化庁文化交流使として、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、アフリカ、中東、オセアニアの11カ国・23都市で指導、公演、交流活動を行った。
【本人による解説】
音楽は人間の中から生まれるもの。涙のように、笑みのように、体から湧き上がり、体から離れていくもの。風に乗って運ばれていくもの。と同時に、そこにしかないもの。生まれたらすぐに消えてしまうもの。悲しみ、喜び、怒り、嘆き、あらゆる感情が浄化して出来上がった色。光のような色。影のような色。過去にも現在にも未来にも縛られず、しかし同時に圧倒的に過去であり、現在であり、未来でもある。時間の寄り道である。寄り道は人間が作る道。私たちの心と体と頭、つまり精神と肉体と知性の結晶で作る道。それは人間のあらゆる熱量の結晶。目に見えない私たちの姿そのもの。